レンズの基礎知識
レンズ|表記について
まず最初に知らなくてはいけないのがレンズに記された表記の見方である。
各レンズ自体には下記のように表記されている。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
ここで注目すべきは数字の部分である。
24-70mmと書いてある部分は、焦点距離を表している。
2.8と書いてある部分は、明るさを表している。
焦点距離とは
焦点距離とは、撮影に適した焦点距離を表している。またその焦点距離で、どれぐらいの範囲の広さ(画角)の撮影ができるかわかるようになっている。
焦点距離の特性
この図を見ていただくと、
18mmの焦点距離では、近い被写体で広い範囲の撮影に向いていることがわかる。
200mmの焦点距離では、遠い被写体で狭い範囲の撮影に向いていることがわかる。
焦点距離を変えられるズームレンズ
先程の例、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sの場合、24と70mmのと2つの表記がある。これはその範囲で焦点距離を変えられるレンズのことである。この焦点距離を変えられるレンズの事を、ズームレンズという。
このレンズの例でいうと、24mmの広い範囲の写真も撮れるし、70mmの少し遠い物も撮れるレンズというわけだ。
この24-70mmという焦点距離のズームレンズを、一般的に「標準ズームレンズ」と言われるレンズである。何を持って標準かと言うと、焦点距離が50mm前後のものを標準としているからである。
読み方
(例)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 「ニーヨンナナジュウのエフニーテンハチ」
望遠と広角
まず、焦点距離が50mmを標準とした場合、50mm前後をカバーしている35mm~70mmは、標準域の焦点距離と言われる。そして24mmより小さい数字を広角域、さらに18mm以下の数字になると超広角域と呼ばれる。
反対に、70mmより数字が大きくなるのを望遠域と呼ばれ、200mmを超える焦点距離については、超望遠域と呼ばれる。
感覚としての把握
ただこれについては感覚的に覚えて頂きたい。
人によっては35mmを広角と呼ぶし70mmを望遠と呼ぶ。また、200mmまでの望遠域を中望遠と言ったりもする。
しかし、焦点距離の認識としては大きくズレることはないので、上の図のように理解していただければ良いと思う。
35mm換算とは
よく、レンズカタログなどで「35mm換算」という表記を良く見かけると思う。なぜ換算しなくてはいけないか。
それは、カメラのセンサーサイズで焦点距離が変わるからである。
フィルムカメラの時代、その当時一般的に使われていたフィルムの規格が35mmであった。その35mmのフィルムを使用した場合あればレンズ表記の焦点距離になるということだ。
デジタルカメラが主となった現代、この35mmフィルムとフルサイズセンサーが同等サイズとなっている。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sのレンズを例にすると、フルサイズのカメラを使用した場合であれば、24-70mmという焦点距離になる、ということだ。
センサーサイズが変われば、焦点距離も変わってくるので、24-70mm(35mm換算)と表記してあるのだ。
焦点距離の違いによる作例
超広角画角での作例
広角画角での作例
標準画角での作例
望遠画角での作例
超望遠画角での作例
f値とは
例に上げている、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sの続きである。
焦点距離の数字についてはわかっていただけたと思うが、次に表記されている「f/2.8」という部分の説明である。
よりわかりやすくするため、実際のレンズ表記をいくつか出してみる。
- 24-70mm f/2.8E ED VR
- 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR
- 24-120mm f/4G ED VR
- 70-300mm f/4.5-5.6E ED VR
- 50mm f/1.4G
- 85mm f/1.4G
- 85mm f/1.8G
上記リストのレンズの中で見ていただきたいのは、f/のあとの数字の違いである。
表記されているのは最小のf値である。または開放f値とも呼ばれる。
この数字の値が小さいほど、明るいレンズなのである。
また「f値」のことは、レンズの中の羽を広げたり絞ったりすることから「絞り」とも呼ばれる。
f値が2つ表記されているのは
上記リストで②と④は、それぞれ「3.5-4.5」と「4.5-5.6」と2つの数字が表記されている。
これはズームによって最小のf値が変わる事を意味している。
②の24-85mm f/3.5-4.5G ED VRの場合。
焦点距離が24mmの時、最小のf値は3.5であることを指し、焦点距離が85mmの時では、最小のf値が4.5になることを指している。
24mmのワイドな焦点距離ではf3.5の明るさで撮れるが、85mmにズームした焦点距離だとf4.5の明るさに落ちる、といった具合だ。
ちなみに、①や③の「f/2.8」や「f/4」のように、ズームレンズなのにf値が一つしか表記されていない場合がある。
この場合は、ワイドでもズーム明るさは同じである事を示している。一般的に「f2.8通し」だったり「f4通し」といった言い方をするのだ。この通しになってるレンズは比較的性能が良く高額なレンズになる。
f値は明るさの値
さて、明るいレンズとはどういうことか。下の画像で比較してみよう。
4枚の写真でわかるように、レンズ内の羽根で、穴の大きさが変化する。
これで光を取り込む量を調節し、f値が小さいf1.4は光がたくさん入って明るくなる。反対にf値が大きいf16は、光が入る穴が小さいため暗くなるのだ。
またこのf値は、明るさ以外にも変わる要素がある。それが被写界深度である。
f値によって変わる被写界深度
f値では、明るさの他にピントの合う範囲も変わってくる。これが被写界深度である。
上記の写真は同じアングルで、f値を変えたもの。
f1.4では一部分にだけピントが合っている状態である。奥までピントが当たっておらずピントが当たる深さが浅いので、これを「被写界深度が浅い」という状態を言う。
反対にf11のように、f値を絞って数値を上げると、f1.4と比べてピントが奥深くまで当たっているのがわかる。これを「被写界深度が深い」という状態である。
被写界深度による写真の仕上がり
被写界深度による影響は、主に写真の仕上がりに関わってくる。
f値の低い写真(被写界深度の浅い)は、ピントがあっていない分がボケていて柔らかい印象の写真になる。
反対にf値を高くした写真(被写界深度が深い)は、奥深くまでピントが合い、パリッとした解像感の高い写真になるのだ。
ヒント
f値で明るさが変わるはずなのに、上記の2枚の写真では明るさが変わらない。あるいは若干f11の方が明るく見える。これは被写界深度の比較になるように、露光時間を調整して、明るさが大きく変わらないようにしているからである。これはシャッタースピードの設定で変わってくる。シャッタスピードの話はまた別の機会に記事を書く。
f値による品質と価格の違い
このf値は、レンズ品質を見極めるときにも大切な手がかりとなっている。
f値が小さいレンズほど、高い光学特性で高品質であることが多い。そのため高額なレンズが多い。
例えば、同じような焦点距離のレンズで、f値が2.8通しとf4通しとf3.5-4.5の物比べてみよう。
f2.8通し
ニコン AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 258,696円
f4通し
ニコン AF-S NIKKOR 24-120mm F4G ED VR 144,000円
f3.5-4.5
ニコン AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR 67,494円
似たような焦点距離であっても、f値の違いで価格が大きく変わることがわかる。
単純にf値が低いと明るいというだけでなく、写りの質そのものが違ってくるのだ。
カメラよりもレンズ性能で写りが変わる
写真というのは光を取り込んで写し出される物である。
その光を受け止めるカメラも大事だが、光を通すレンズはもっと大事である。いくら高性能なカメラであっても、レンズが悪いと、カメラの本来のポテンシャルを発揮できないのだ。
全てf2.8通しでレンズを揃えていけるのが理想である。
しかしレンズの使用頻度などを考慮しあまり出番のないもの、または絞って撮ることが多い場合などは、f4などのレンズで揃えても良い。また人物や料理など被写体が明確な場合は、焦点距離は決まってくるので、f値の明るい単焦点レンズを揃えるのもオススメである。
単焦点では、ズーム構造のレンズに比べ、部品点数や設計上で簡素化される分、光学性能のよいレンズでありながら安くなる傾向になる。
AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G ED 91,575円
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G 64,350円
AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G 66,825円
カメラの場合は数年おきに新製品サイクルが来て価値は落ちるが、レンズの場合は定期的なメンテナンスをしていけば型は古くとも半永久的に使用していけると言っていい。なのでプロで行くのであれば自分の得意な焦点距離のレンズから順に、良いものを選んで頂いたほうが良い。
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